主な著作
1.『都市を計画する』 岩波書店, 1977年
2.『環境計画論』 鹿島出版会, 1980年
3.『都市ヨコハマをつくる:実践的まちづくり手法』
中公新書, 1983年
4.『都市の個性とはなにか:都市美とアーバンデザイン』
岩波書店, 1984年
5.『まちづくりの発想』 岩波新書, 1987年
6.『都市ヨコハマ物語』 時事通信社, 1989年
7.『江戸東京まちづくり物語』 時事通信社, 1992年
8.『現代都市読本, 東洋経済新報社』 1994年
9.『美しい都市景観をつくるアーバンデザイン』
朝日選書, 1997年
10.『まちづくりの実践』 岩波新書, 1999年
11.『自治体学入門』 岩波書店, 2000年
12.『まちづくりと景観』 岩波新書, 2005年
13.『「市民の政府」論:「都市の時代」の自治体学』 生活社, 2006年
14.『都市プランナー 田村明の闘いー横浜〈市民の政府〉をめざして』
学芸出版社,2006年
15. 『東京っ子の原風景』公人社、2009年
田村明の著書リスト
田村明の著書の幾つかを以下に掲載します。
田村明の論考リスト
田村明の主たる論考22編(word原稿)
都市政策プランナー田村明(1926-2010)の論考と著書は分かっているだけでも、論考(論文と随筆を含む)371編、著書(単著と共著)71本あります。現物を確認して公開する(又はアクセスできる)ことを前提としていますが、恐らくこれ以上あるでしょう。今回著書リストを作成する上で、掲載元の企業団体にコピーの寄贈をお願いしました。快く対応いただき、感謝します。また、国会図書館、横浜市立中央図書館、大学図書館、神奈川県立図書館、行政機関、新聞社等の多くの機関の方々にお世話になりました。田村本人が作成した著書リストにも、幾つかのミスがあり、故人の膨大な著書を整理することの大変さを感じました。
ただ、人と人のつながりで論考等にたどり着いても現物を発見できないことも多々ありました。この中には、講演をして講演録をまとめたが紛失して現物が確認できないもの、情報誌で会員限定のため公開しないもの、掲載された企業情報誌の企業に辿りつけないもの、いろいろな事情があります。それでも、確認できたものを丹念に読み込んでいくと、田村が勉強を深め実践を踏むことで自身の理論構成が研ぎ澄まされていく様子が垣間見られます。
ここに選定した22編の論考と著書は、田村が時代の変遷の中で常に主張してきた論点に沿ったもので、まとまったものを抽出しました。都市の過密、都市政策づくり、都市の自立性、都市経営論、プランナー論、自治体政策論、自立した職員の育成、等のテーマがあります。年代順にも配慮しました。多彩な発行者となっています。なお、各表題の最初の番号は「論考」の分類番号で、Bがついている番号は「著書」の分類番号です。
最後に、田村は永く自身の呼称を「都市プランナー」としてきましたが、晩年は「都市政策プランナー」を使っています。だんだん書く対象が都市経営や自治体政策そして人材育成に係わり、物的響きがある都市プランナーでは包含できなくなったからでしょうか。
なお、論考PDFで「word」と記載されているものは当NPOの英文websiteに英訳して掲載してあるものの英訳用原稿です。
(田口俊夫2024.3.26)
22 田村明:都市工学からみた過密対策,横浜市立大学都市問題講座,1号,横浜市立大学都市問題講座運営員会,pp.20-39,1968.6
田村明が横浜市に入る(1968.4)直前に書いた論考である。都市の過密問題とその解決策を総合的視点から理論的に説いている。まだ、実践面のつめがない。飛鳥田市長の意向で始まった横浜市立大学の講座で、飛鳥田市長以下学者たちが分担して書いている。
24 田村明・鳴海正泰:都市政策保守と革新,現代社会主義,現代社会主義研究協会,pp.76-87, 1968.8
田村明が横浜市に入り、飛鳥田市長の政治参謀の鳴海正泰との対談である。自民党と社会党の都市問題に対する意識とその政策づくりの違いを議論している。保守でも革新でも日常的課題の対応面で違いがないが、革新自治体には100年先を見通した都市政策を期待した。
45 田村明:CATV出現の社会的背景,ハウジング,中央公論社,pp.41-44,1970.11
まだケーブルテレビジョンCATVが日本で定着していない1970年当時に、田村明がこれに着目したことが驚きである。CATVの導入がどう社会を変えていくかを考えている。田村は都市づくりで、ここまで総合的に考えていたのかと感心する。なお、原著は所在不明。
53 田村明:プランナーの必要性とその活動,Space Design,85号,鹿島出版会,pp.20-32,1971.10
企画調整室が誕生してまだ4年目の1971年、『スペースデザイン』が通常号で横浜の都市づくりを特集した。田村明の持論の自治体におけるプランナー論を展開している。なぜプランナーが必要なのか、どのようなことが期待されるのかを実践を踏まえ語っている。
66 田村明:国土計画のワナ,市民,11号,《市民》編集委員会,勁草書房,pp.28-34,1972.11
ちょっと変わった雑誌『市民』に書かれた国土計画と日本列島改造論への批判論文である。経済企画庁の国土計画が政治的道具化されて実践力がないが、一方、田中角栄による日本列島改造論も短期的投資の話に終始している。国土計画には長期的戦略が必要と田村は語る。
92 田村明:都市行政から都市経営へ-都市経営論序説,世界,362号,岩波書店,pp.43-56,1976.1
1972年より企画調整局長となった田村明が、それまでの横浜での実績を基に『世界』に都市経営論を満を持して発表した。都市経営の思想から始まり、自治体と市民による地域経営論と市民による自治体の経営主体性の確立を求めている。力の入った研究論文である。
124 田村明:都市計画と環境の質,建築と都市 a+u,エー・アンド・ユー,pp.91-96,1979.3
大通公園完成直後に書かれた論考である。田村の横浜での仕事は、大通公園を確保するための高速道路地下化事案で始まった。都市計画がいかに総合的でないか、そして将来を見据えた計画論がないかを述べている。大通公園の実現は田村にとって記念碑的なものであった。
131 田村明:都市計画法の理念と現実,都市問題,70巻8号,東京市政調査会,pp.3-18,1979.8
都市づくりの現場から離れた田村明が、これまでの経験を基に都市計画法を見直す研究論文である。旧都市計画法制定から新都市計画法制定に至る背景や、それぞれが抱えた問題点を詳細に分析している。新法がすべての面で旧法に勝ると言えないという指摘は興味深い。
156 田村明:老人問題を考えるにあたって,調査季報,68号,横浜市企画調整局都市科学研究室,p.2,1980.12
細郷市長によって左遷された田村明が都市科学研究室長事務取扱となり、『調査季報』特集の巻頭言として書いた。誰でも生きている限り経験する老人問題の対応は、施策化しづらい課題だが、家族だけで支えるのでなく、地域社会で支える仕組みの構築が必要とした。
167 田村明:自治体の政策プランナー,ジュリスト増刊総合特集22号,地方の新時代と公務員,有斐閣,pp.203-209,1981.4
これまで国に比べ見劣りしてきた自治体の政策立案能力から、自治体がもつべき自立した政策プランナーの必要性を述べた。長期の市民の利益、総合性、地域性、そして具体的実践性など持つべき特性を上げ、育成システムに言及している。プランナー論の集大成といえる。
202 田村明:市長・飛鳥田さんとわたし,地方自治通信,170号,地方自治センター,pp.39-42,1984.1
日本社会党委員長に転出した元横浜市長・飛鳥田一雄の評価と自身との交友関係を書いた。自治体を「市民の個に立つ市民自治の主体」に変えてゆくことを飛鳥田は主張して実践したと評価した。上下分け隔てなく人間味に溢れた人柄に在任中の田村は助けられたという。
208 田村明:都市における土地の高度利用,ジュリスト,増刊総合特集34号,有斐閣,pp.162-168,1984.3
都市環境の高度化とは質の向上を目指すものである。そのための法律制度は数多いが、総合化して運用することができていない。都市の個性に応じて、市民の力を結集して高度化を図るには自治体に期待するほかない。田村明の理論と実践の蓄積を反映した論文といえる。
B32 田村明:中央政府と自治体間の政治手続き,年報政治学1985,日本政治学会編,共著,岩波書店刊,pp.197-224,1986.3
田村明による中央政府と自治体間の「政治手続き」に関する大論文である。実は「政治手続き」とは田村による新しい概念だが、異なる主体間の意思決定構造を解き明かそうとする試みである。横浜市で企画調整機能を実践してきた田村だからこそ書けるテーマといえる。
B34 田村明:自治体における政策研究の実践:ローカルガバメントの展望を拓く,田村明他編著,総合労働研究所,1986.7
田村明が自治体における政策研究の重要性を問いかける。政策主体となるには職員たちが、地域への誇りと愛情をもち、広く多くの地域を見聞することが必須条件である。自治体職員はやる気があって、豊かな感情を備えた人であるべきと言う処に田村らしさが表れている。
263 田村明:自治体ヘッドハンティングの有効性と問題点,地方自治職員研修,20巻11号,公務職員研修協会,pp.45-47,1987.11
田村明の個人的経験から、自治体職員への外部人材活用策を論じている。田村自身がヘッドハンティングであったかは微妙で、コンサルタントとして提案した側から実践する側に転身したわけである。外部から入る人材への留意事項も書いてある親切な論考である。
270 田村明:まちづくりの思想-都市とごみをめぐって,思想の科学,107号,思想の科学社,pp.32-39,1988.9
都市のごみ処理の在り方について総合的な視点が必要と論じている。横浜をはじめ各都市での取り組み事例を紹介しながら、物的再利用を総合的な社会経済メカニズムで可能にすべきとした。七大都市首長懇談会での経験から自治体首長の姿勢が重要となるとした。
B39 田村明:地域の自立をめざして-とくしま自治体会議報告集,田村明・三木俊治編著,公人社,1988.10
1986年神奈川県の支援を受け横浜で設立された自治体学会の第一回総会・研究会が1987年徳島で開催された。自治体職員や研究者そして市民が個人として参加し研究交流する学会設立は、田村明が深い思い入れをもって係わったものである。活動趣旨等を報告している。
280 田村明:市民とまちづくり-魅力ある都市をめざして,法政,法政大学,1989.10
毎年地方都市で開催してきた法政大学の公開講座で、一般市民向けにまちづくりの意味と課題を論じている。個性的なまちづくりの必要性を語り、その際に市民が市民自身の問題として考え行動すべきことを語っている。また、都市の質は生活文化から考えたいと言う。
297 田村明:飛鳥田横浜市政が残したもの,地方行政,8380号,時事通信社,pp.2-9,1990.11
1990年に亡くなった飛鳥田一雄を悼み、横浜市の飛鳥田時代を田村明が自身との関係から振り返り、自治体の在り方を問いかけた。飛鳥田は市民防衛の主体として自治体を改革して、かつ政策主体として自治体を高めた。最後に今後も「地域の時代」を切り開くことを掲げた。
352 田村明:都市政策の総合性と都市のグランドデザイン,都市問題,88巻9号,東京市政調査会,pp.17-30,1997.9
都市政策には、まずその都市のあるべき理念としてのグランドデザインが必要と田村明は語る。総合的な都市政策とグランドデザインの実践には、市民の事務局である自治体に企画調整部門が必要である。そして、その部門を運営する人材の育成も重要であると語る。
364 田村明:自治体職員の誇り「市民の政府」のスタッフとして,地方自治職員研修,571号,公務職員研修協会,pp.12-13,2008.4
自治体職員のあるべき姿を田村明が語る。「市民の政府」のスタッフとして、その自覚と必要な能力をもち、誇りをもつべきと言う。自立した意識をもち市民と共に活動し個性的まちづくりに勤しむ。硬直的な縦割り仕事でなく、市民と共に総合的に行動すべきという。
365 田村明:魅力がなく,目を覆う惨状,もはや小手先の施策では限界,週刊ダイヤモンド,2008.12・2009.1新年合併号,ダイヤモンド社,p.160,2009.1
田村明の最晩年の論考で、中心市街地衰退の危機を訴えている。自己中心のバラバラな個別建設が先行し都市全体を考える発想が欠けていることは、田村が常に言う総合性がないことを指す。都市の魅力は異質交流にあるという指摘は、田村流都市づくりの真骨頂である。
(注)以下のPDFは原本から英訳化のためにword化したものです。一部に誤字脱字があります申し訳ございません。更に下の「論考でPDF化できたもの」に原本のPDFがありますので、そちらもご利用下さい。