6月23日(金)公開研究会報告(速報)

 

1.奥津憲聖『近現代個人文書が有する価値とその編成-都市プランナー・田村明の旧蔵資料を事例に-』

 

2.青木淳弘『<いま>田村明を<読む>ということ-田村明の社会学的研究構想-』

 

 NPO会員20歳代の二人の発表は意義深かった。

 奥津さんの発表で、果たして日本の地方自治体の公文書管理はどうなっていくのだろうか、また「歴史」に学びながら新たな施策づくりをする姿勢は今後保障されていくのだろうか、と大きな危機感をもった。奥津さんは、国文学研究資料館が主宰した「アーカイブズ・カレッジ」を受講して、アーカイブズには二つの意味があり、記録史料と記録史料の保存施設であることを学んだ。2009年7月に制定された「公文書等の管理に関する法律」により、2009年以降は公文書の永年保存はなくなり、最長30年保存になったという。ただ、それ以前の公文書には永年保存は残るのだが、2020年に移転する横浜市役所の場合、電子決裁になった関係上から庁舎内の書庫が異様に小さいらしい。つまり、保存する場所がないため、今現在市役所では公文書の大量廃棄が始まっているという。情報公開制度は全国でも神奈川県が最初であったが、横浜市には公文書館が存在しない。市内部では「何のために公文書館が必要なのか…」という次元の議論で終始し、公文書を公開していくことが政策への関与となる意識が欠如していたようだ。

 青木さんは、現在まだ東京大学人文社会系研究科社会学研究室に属する修士課程の学生である。都市社会学のこれまでの研究スタイルに竿を差すことを意図し、都市プランナー田村明を題材に社会学的分析に挑戦する。「読む」という著者と読み手の相互行為に注目し、読者が田村の実践をどう読んだかを探る。行政当局と都市市民が協働して都市をつくる視点から、行政の活動も解き明かすべき、と主張する。田村明の膨大な著作物を相互行為に乏しい「単なる著作物」で終わらすのでなく、だれかが読むことにより新たな行動につながっていくことを期待したい。これからの展開が楽しみであるが、研究をどう進めるかが大変そうではある。

 お二人の講演録は近日中にテープ起しをして公開します。少々お待ち下さい。

(文責:田口俊夫)