「まちづくり横浜の総合化と田村明-研究会」の発会とこれから (五島哲男)

 この研究会でお話しする内容は幹事が中心となり、まとめてきました。幹事は田村明さんの弟の田村千尋、コンサルタントとして横浜のまちづくりに長く関わっている寺田芳朗、元横浜市職員の田口俊夫と五島哲男の4名です。この4名でこれまで研究会の準備作業を行ってきましたが、実はこの4名は田村明さんと直接一緒に仕事をしたという経験を持っていません。ただ、田村千尋さん以外の3名は「まちづくり研究会」の中で田村明さんの教えを受けてきました。

 

 また、今回の研究会をつくるにあたっては多くの方の助けを頂いております。内藤恒平さんからは飛鳥田回想録を読むように勧められ、当時の雰囲気をつかむことができました。また、横浜市大の鈴木伸治教授がまとめられた「都市デザインの現場から」という聞き取りの記録は基礎資料として使わせていただいております。漆原順一さんには企画調整局の職員の変遷に関する資料をまとめていただいております。窪田正介さんには当時の都市計画の手続きについて、実務の詳しい中身を教えていただいております。その他、準備会に参加いただいた方々や、関連する活動を行っている方々から、色々意見をお聞きして、今日に至っております。大変感謝をしております。

 

 研究会を始めようとしたきっかけとして、六大事業やあるいは田村明という名前さえ知らない若い人が増えてきているという現状があります。1960年代の末から70年代にかけて、横浜が全国に先駆けて新しいまちづくりに取り組み、横浜の都市の骨格をつくりあげてきた、こういう事実が放っておくと皆から忘れ去られてしまうんではないかと、こういう危機感が研究会を始めた大きなきっかけの一つです。

 


 当時は人口の急増という大変大きな問題がありましたが、今は人口の減少へと転換する時期にあたっており、横浜を取り巻く状況は変化しております。しかし、当時行われていた総合的なまちづくり、あるいはいかに行政を生き生きと活かしていくかという仕組みというのは今後のまちづくりに役立つのではないかという意識も幹事では共有しております。

 

 また、実は田村明さんが世界の都市の数多くのスライドを残されております。これを役立てられないかという思いも研究会設立の発端となっております。このきっかけから目的を整理いたしまして、六大事業を推進していた時代の横浜の先進的なまちづくりの仕組みと、その成果を若い世代に伝えていこうというのを研究会の目的といたしました。しかし作業をしてみると、実は我々自身も表面的にしか当時のまちづくりを理解していなかった、ということが分かってきました。そこで、我々が知っていることを次の世代に伝えていくというのではなくて、もう一度、年を取った我々と若い世代が協働で、横浜のまちづくりの歴史の発掘作業を行って、そのまちづくりに関する知識をみんなで共有していこうということを目的としております。

 

 また、現在、横浜市大では国吉先生、鈴木先生が横浜のまちづくりについて研究されています。他にも東京の現代まちづくり塾では田村明関連のアーカイブをつくってインターネットでの公開を行っています。まちづくり協会では、田村明研究会というものを立ち上げて研究をされており、横浜のまちづくり塾も関連するテーマを取り上げております。こうした関連する色々な情報を集めて、力を合わせながら横浜のまちづくりについて考えていきたい、ということを研究会の目的としております。

 そこで、具体的に何をやっていくかということですが、1つは横浜のまちづくりに関する聞き取りを中心とする研究会です。当面、関係者の方から聞き取りを行って、論点を整理しながら、資料を整理しながら、体系的な聞き取りを行い、そうした成果を発表したり、あるいは聞き取りそのものを行うための研究会を開催していきたいと考えています。そして今日がその研究会の第1回ということになります。

 2番目の具体的な活動としては、横浜の総合的なまちづくりに関する年表の作成をやりたいと思っております。どういう経過をたどって横浜のまちづくりが進んできたのか、ということを表す年表をつくりたいと考えています。これは聞き取りをやる際の論点整理の基礎的な素材として活用したり、ほかの研究者の方に利用していただいたりできるようなものにしたいと思っています。インターネット上にあるWikipediaのように皆が書き込みを行いながらつくりあげていく年表ができればいいなと思っておりますので、どうやればそういったものが上手くつくれるかという、つくり方についても皆様のアイデアをいただければと思っております。

 3番の活動としては横浜の総合的なまちづくりに関する研究や活動を紹介するホームページを、これはすでに立ち上げております。今日、入口でお配りしましたカードがありますが、ここにURLが書いてありますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。このホームページ上で関連する団体や研究の動きも、ご協力いただければご紹介していただきたいと思っております。

 4番目の活動としては、これはまだできるかできないか検討中なのですが、横浜のまちづくりに関する報告書等の収集をやって、できればデジタル化をして公開していきたいな、と思っております。横浜のまちづくりに関する第一次資料の多くは市史資料室の方に今、保管されていますが、これをデジタル化してインターネット上で公開できれば、大変利用しやすくなるのかなと思っております。

 ぜひ、みなさま参加をしていただきたいなと思っておりまして、我々4人だけでやれることは大したことではありませんので、皆様参加の中で活動を充実させたいと思っております。一つはこういう研究会をこれからも開いていきますので、この研究会に参加するというだけでももちろん参加の一つではあります。あるいは、ご自分の調査をもとに研究会で発表してみよう、という参加の仕方もあります。あるいは、研究会で取り上げる論点整理、準備段階にも参加したいな、という方がいらっしゃったら、ぜひホームページ上に連絡先をいれておきますので、そこに書いていただければと思います。あるいは関係者からの聞き取り、これもなかなか刺激的で面白い作業なのですけれども、一緒に行っていただければと思います。また、今回も当時の神奈川新聞のマイクロフィルムを読んだり、市会の記録を読んだりする作業をかなりしておりますけれども、そういった資料を確認する作業を一緒にやっていただけるという方もいれば、ぜひ手を上げていただければと思います。ぜひ多くの力を合わせてですね、研究会を充実させたいので、このホームページの中に「問い合わせ」という欄がありますので、そこでメッセージをお寄せいただけるよう期待をしております。

 以上が研究会の概略でございますが、ここで、もっとこんなことをやった方がいいよ、という色々なご意見があるかと思いますが、今日は盛りだくさんの内容でありますので、ご意見・疑問等は最後のコーナーで頂戴するということで、あるいはそれでも時間が無い場合はホームページ上に寄せて頂いて、ホームページ上で議論、意見交換を続けていきたいと思いますので、私の研究会のご紹介は以上とさせていただきたいと思います。