横浜市都心部における高速道路地下化事案にみる自治体による総合的調整の役割
田口 俊夫
土木学会論文集2023 年 79 巻 9 号 論文ID: 22-00290
発行日: 2023年
公開日: 2023/09/20
DOIhttps://doi.org/10.2208/jscejj.22-00290
ジャーナル 認証あり
抄録
首都高速道路横羽線の横浜都心部への延伸部分を地下化した事案は, 一旦都市計画決定した高速道路事業を変更したものである.首都高速道路を所管する建設省と高速道路と路線で競合する市営地下鉄を所管する運輸省, そして首都高速道路公団と神奈川県に対して, 都心部再開発の軸線として大通公園を構想する横浜市が主導して 1968年から一年間に及ぶ総合的調整作業を行った.自治体が都市景観の保全という地域的価値観を掲げ, 路線的かつ構造的に競合する都市インフラ事業を総合的に調整した.地域の価値観により都市づくりを総合的に実践するため, 飛鳥田一雄市政は都市プランナー田村明を招き企画調整室を立ち上げ, 総合的調整の事務局とした.当研究の目的は, それまで詳細が不明であった高速道路地下化に関わる総合的調整過程を明らかにすることである.
解説(田口)
当該論文は、日本建築学会計画系論文集Vol.85 No.769 2020/3に採択掲載されたものを、新たな経緯資料の発見によって補足したものです。高速道路とまちづくりに係わることから、本来的に土木の世界での評価も求められるものでした。残念ながら、建築学会は補足論文の趣旨を共有できなく、採択不可となりました。それゆえ、まちづくりと行政運営の観点から、土木学会が1960年代事案の意義を認めた頂いたことに感謝します。