田村明『自治体職員の誇り「市民の政府」のスタッフとして』(地方自治職員研修571号PP12‐13〈2008年4月〉を読む (檜槇貢)
田村明さんの「市民」をどう読むか、がテーマである。
その勉強会に参加した。
対象にしたペーパーは表題のもの。
NPO法人田村明記念・まちづくり研究会メンバー6名(在野の研究者2名、博士課程1名、社会人大学院生1名そして韓国とドイツの研究者)の協議となった。
横浜市役所1階にある横浜市民協働推進センターで16時から18時過ぎまでのフリートーキングだった。
市民、住民は地域政策、都市政策の名宛。
市民、住民のために地域政策を研究しその実現の途を模索する。
田村さんもそれは同じだと思っている。
議論でえぐり出したことは2つ。
1つは自治体職員が「市民に所有されるものだ」ということ。
もう1つは市民の政府の実現は制度変更ではなく、自治体職員が学び、変わることだ。
この論文は地方分権一括法が施行され、地方分権が定着するかに見えたころの文章で、市民の政府を実現できる運動を自治体職員にしかけている。
田村明さんは都市自治を実践者だった。
1960年代から10年の時期に横浜市を大きく変えた。
それまでの東京の郊外から都市ヨコハマへの実現の途を創り上げた。
この論文は田村明さんにとっての「まちづくり」を語っているのではないか。
自治体職員は地方公務員法以前に市民の所有なのだ。
パブリックサーバント(公僕)とは市民の所有物だという認識がいる。
そんな指摘を確認評価したい。
市民の政府は分権制度によって創られるものではなく、市民の所有物の自治体職員がそのような行動をとることによって初めて市民の政府が実現する。
それが田村明の意図であり、田村さんから私たちに向けた「宿題」である。つまり、田村さんは自身の市民論を詳細に整理せず、それをどう読み取り現代社会で実践的に生かすかは我々の仕事だと理解する。
次回は、6月4日(火)午後4時より市民協働推進センターで。NPO会員外でも参加可ですが、課題図書24「都市政策における保守と革新」1968を読んでくること。NPOのHP「ホーム」→「田村明」→「著作」下段に掲載しています。
田村明研究準備会報告(敬称略)
日時と場所 2024年5月21日(火)16:00~18:00横浜市市民協働推進センター(市庁舎1F)
参加者 Christian DIMMER(早稲田大学)、吉田泰(法政大学院生)、韓昌熹(市民協働推進センター)、田口俊夫、青木淳弘、檜槇貢
ポイント 1.ねらい
・田村明「自治体職員の誇り『「市民の政府」のスタッフとして」地方自治職員研修571号(2008年4月)12頁~13頁を対象に田村明の市民像を論議し、今後の検討手法を考える。
2.概要
・このペーパーの焦点は次の3つ。①市民の政府としての自治体は「市民の所有格」として位置づけるという見方、②市民の政府は制度を変えることによって得られるのではなく、首長のリーダーシップと自治体職員の動きが優先すべきこと、③市民の政府は成熟した市民によって成立するが、現在の市民はまだその段階に育っていない。
3.参加者の感想・触発(文責:檜槇)
・このペーパーの対象は自治体職員をイメージしている。
・あらためて、田村明の「市民の政府」という表現はいつ頃から出されたものかを知りたくなった。
・田村明の「市民」とはコミュニティシップのわく組でのものではないか。
・そもそも自治体職員は労働者としてとらえられるべきではなく、「まちづくり」を創り上げていくのしくみの部品としてとらえるべきだ。
・自治体職員への田村明の姿勢に、性善説的傾向を感じる。
・田村明は議論は好きな人だが、議論の相手を論破するようなことはしていなかった。
・田村明がまちづくりの現場で市民とどう付き合ったのかを説明するのは難しい。
・自治体職員や市民が田村明の提案や構想等をどのように受け入れ対処したのかを知ることが重要。
・市民に何を提起したかったのか、それを田村明の宿題として認識し共有すべき。
今後 ・「市民」を中心に田村明の宿題を発掘共有する研究会を目指す。
・田村明の22編を読み込んでその論点検討を進める。https://www.machi-initiative.com/%E7%94%B0%E6%9D%91-%E6%98%8E-akira-tamura/%E8%91%97%E4%BD%9C-bibliography/
・次回は6月4日(火)16:00~18:00、横浜市市民活動協働推進センター(市庁舎1F)
備考 2024年5月7日(火)16:00~18:30、横浜市市民活動協働推進センターにおいて、韓、田口、檜槇の3名で田村明と市民の関係に関する研究会発足の打合せを行っている。この会議はその打合せを踏まえて行ったもの。