香港でこまったこと

研究学会の年次大会で、研究論文を発表することはこれまでもやってきた。ただ一発表者として自分の研究論文を短時間で発表し、ほとんどない質問を受ける・・・そんな感じであった。ただし今回は、三つの発表グループが参加する分科会で、自らの論文発表と全体の司会進行をやれと急に指名された。全体で105分、本来は四グループなので、発表時間もたっぷりあってしまう、それでも一応20分とした。質問がなければ、あっという間に終わってしまう。さて、困った・・・

 

これが7月2日から4日まで香港のCUHK(香港中文大学)で開催された国際学会(国際都市計画史学会IPHS)に当NPO田村明研究会の代表として出席した場での「困った状況」である。昔20代で英語ができないまま留学して、ほとんどできないまま帰国した自分にとって、英語で発表してかつ司会進行まですることは想定外であった。分科会の当日まで眠れない夜が続いた。自分の発表は原稿を用意し練習してきたため、それを読み上げることで無事終了。その場で質問を受けるのでなく、すべてのグループが終わったら質問タイムにすることで合意、どうにか切り抜けた。実は自分以外のグループも日本人研究者たちで、なんなら日本語でやれば簡単・・・となるが、それは国際会議では御法度である。自分の論文と他の二つの論文の共通点(通常はないが)を無理やり発見して、それらに通じる課題について、共有できる視点(この場合は地域コミュニティと自治体の協力関係)を提示した。自分の研究テーマは横浜本牧における接収解除と跡地開発における行政と市民の協働作業で、他の二つも災害復興に際しての地域コミュニティのあり方であったことが幸いした。

 

発表者や指導教授たちの協力により、実は与えられた時間一杯盛んに質問や意見交換が行われた。司会役からも質問をぶつけ、答えのない答えを引き出そうとした。当然、自分の研究課題も正直に話した。香港の場で、このような視点で楽しい時間が持てたことに感謝したい。(文責:田口俊夫)

発表論文
The port city of Yokohama by T. Taguchi
PDFファイル 2.0 MB