区域区分研究会の開催 Research about the history of Delineation, development control measures, in Yokohama.
NPO法人田村明記念・まちづくり研究会では、NPO会員である工学院大学星卓志研究室と共同で、横浜市における区域区分設定の歴史と変遷を市内のモデル地区を設定して研究を進める予定です。市内の調整区域は1970年の設定以降、市域面積のほぼ四分の一を占めていますが、徐々に農地が減少する反面住宅地が増える傾向が見られます。新たな農と住の共生の在り方を考える時期に来ているのではないでしょうか。
開発行為の定義変更
横浜市における「開発行為」の定義は、区画形質の変更であった。つまり、区画を分割する場合は「開発行為」に該当すると、田村明時代から厳しく定義してきた。当初から国(建設省)は「公共施設(主に道路)の新設を伴わない場合は開発行為に該当しない」としてきたが、1987年の建設省通達により横浜市も市街化区域での定義を同年から、そして調整区域での定義を1993年より適用した。これにより、敷地分割によるミニ開発が再燃した。この定義の変更が市役所の宅地指導部門の職員がもつ「宅地指導行政ハンドブック1994年版」に記載されている。当該文書を、市担当部署の職員の協力により発見した。残念ながらそれより以前のハンドブックは市に保管されていない。
建設省通達住指発第253号1987年8月18日(開発行為の定義)
開発行為の定義を「公共施設の新設を伴わない場合は開発行為に該当しない」としてもの。建設省は1970年当初からどうであったが、再度関係自治体に通達してものである。
日本建築学会2022年度大会梗概
横浜市における市街化調整区域の扱い方針の変遷
2022年10月7日
田口俊夫
昭和45年6月10日当初線引き決定告示
横浜市基本都市計画審議会答申書1970年4月17日
区域区分は、「都市計画という総合的な計画を実現するための計画手法の一種」で、「全体的総合性の判断の上にたつ計画意思が個別的な利害関係によって不当にまげられることのないように配慮しなければならない」としている。市街化区域を、「10年以内にこのような義務(注:公共公益施設を優先整備する)を果たすことのできる確実な見通しのないままに漫然と区域を拡大すべきでない」とし、それゆえ「将来市街化することが適当と思われる地区であっても、当分は市街化調整区域として段階的整備を行なうことを考慮すべき」とした。調整区域は、「単にスプロールを防止し、これを拡大させない区域という消極的な性格のほかに、農業の保存、振興、自然の風致、景観の保護、将来の大規模開発のための留保などの積極目的に役立てるべき区域として性格づけるべき」とし、積極的な意図を持たせた。そして、スプロールが進行中の地域についても、「そのまま放置して、将来良好な市街地となるのを不可能にすることをさけ、区画整理等計画的に市街化をはかる機会まで市街化調整区域に指定すべき」とした。これが横浜市独自の凍結保存される「スプロール初期地区」の指定となった。
第1回一斉見直し:昭和52年3月30日線引き見直し決定告示
昭和51年9月17日横浜市基本都市計画審議会答申
今回変更の基本的な考え方
線引きと同時に施行された開発許可制度によって無秩序な開発が抑止され、市街地の環境悪化は相当程度防止された。
横浜市の人口は依然として増加の傾向にあり、現行の市街化区域においてもまだ相当程度の人口増を収容する余地がある。
一方、市街化区域内の未市街地で現状では都市施設の整備の見込みが立つていない地域については、この際市街化調整区域にすべきであるとの考え方もあるが、昭和45年線引き時に計画開発を予定していたにもかかわらず実施の見込みがない地域を除いて(注:現青葉区船頭地区・元石川町と戸塚区東戸塚上品濃は逆線引き)、線引き以後6年を経たに過ぎない今日においては市街化区域にとどめ今後の検討を待つことが妥当と考える。
農地・山林等の保全・増進のための事業を積極的にすすめるための基準や要綱について検討する。
都市整備及び農地・山林等の保全のための特定の財源を自治体が確保できるような税財政措置を自治体が選択できるように国に強く要請する。
第2回小委員会(昭和51年9月7日)議事録
昭和45年の線引きはもっと厳しく決めるべきだったが、初めてということで不十分な点も確かにある。しかし、今となっては広過ぎたということは筋論として言えない。(注:市街化区域が広過ぎた、ということか)
昭和51年10月9日線引き市案を県へ申請
第2回一斉見直し:昭和59(1984)年12月25日線引き見直し決定告示
変更にあたっての基本的視点
「よこはま21世紀プラン」における本市の都市政策の基本方向に即して、次の目標のもとに見直しを行うものとする。
l 良好な農地・山林・緑地等の自然的環境を極力保全する。
l 首都圏の中核都市としての都市構造の強化を図る。
l 公共性の高い良好な開発については、適正に誘導する。
変更の基本方針
本市の都市施設整備の現況に鑑み、市街化区域の無原則的な拡大は極力抑制する一方、公共性の高い計画開発地については、市街地の計画的整備を担保しつつ市街化区域に編入するものとする。
人口集中地区の区域内にあり、相当程度建築物が集積している地区については、秩序ある都市形成に支障が生じる恐れがないことを見極めて、適正な範囲で市街化区域に編入するものとする。
市街化調整区域の土地利用の方針(整備・開発又は保全の方針より)
市街化調整区域の農地・山林等、自然的土地利用区域は、都市に残された貴重な資産として極力保全する。都市的土地利用を行うにあたっては、就業の場の確保と都市の活力の維持、向上に資するものであり、周辺の自然環境の保全等に十分配慮した計画的な開発によるものとする。計画開発は、計画的な市街地整備の見通しがある区域として認められる場合において実施するものとする。
第3回一斉見直し:平成4(1992)年9月
基本的考え方
いたずらに市街化区域を拡大せず、良好な緑地の積極的な逆線引きを行う。(佐江戸、権太坂地区の編入、能見台森、ウイトリッヒの森の逆線引き)
平成4年12月
農地の保全を図るために、調整区域に編入(いわゆる逆線引き)した。9ヘクタール
第4回一斉見直し:平成9(1997)年6月
市街化調整区域においては、都市農業の振興と山林・緑地の保全を基本とする。なお市街化区域への編入に際しては、農地、山林・緑地との調和を図り、「ゆめはま2010プラン」の考え方に適合した、都市の活力向上等に資する計画的な市街地整備が確実な区域について行うこととする。
第5回一斉見直し:平成15(2003)年3月
線引き見直しの基本的な考え方
近年においては、経済成長が鈍化する中で、産業系市街地における空洞化や、中心市街地における活力低下等が大きな課題となる一方、少子・高齢化の進展により、近い将来には人口がピークを迎えることが予想されています。このような状況にあたっては、郊外部で新規住宅地を開発する必要性は低く、むしろ既成市街地の活性化を図る必要性が高くなっていると考えられます。
また、地方分権の推進に向けた取り組みが具体化し、都市計画の分野においうても本市がより一層の主体性をもってまちづくりを進めていく必要があり、土地利用の実態を捉え、市民の立場に立ってきめ細かな見直しを行っていくことが重要と考えられます。これらの状況を踏まえ、今回の見直しにあたっての基本的な考え方を次のとおりとします。
① 「ゆめはま2010プラン」に掲げる土地利用の基本的な考え方に基づいて実施します。
② 市街化区域をいたずらに拡大しない(基盤整備を伴う計画的開発区域に限って市街化区域に編入する)という従来からの基本方針を堅持します。
③ 事実上市街化している区域について、市街化区域への編入を検討します。
第6回一斉見直し:平成22(2010)年
第7回一斉見直し:平成30(2018)年
2018年区域区分に関する決定権限が県から市に移管されている。市都市計画審議会で決定。
市街化区域は鉄道駅周辺などの拠点整備や生活利便施設等の機能集積を目的とした開発を誘導し、インフラの整備を図るとし、市街化調整区域は、市街化の抑制を基調とし、緑地の保全、活用、創出と都市農業の振興を基本とする。