横浜市・市民の森制度における市有地の割合
市民の森は2025年現在47地区553ヘクタールが指定されている。横浜市市民の森設置事業実施要綱(1971年8月)により実施されてきた。民有山林に散策路などを整備して市民に開放する制度で、1960年代から70年代にかけて、農地法で農地開発は厳しく規制されていたが、規制のない山林が開発されていた。山林を中心に行われていた乱開発を抑制する目的もあった。
2ヘクタール以上の山林で農地を含むこともできる。土地所有者から「市民の森指定申請書」の提出を受け、市長との間で10年以上の契約を結ぶ。固定資産税と都市計画税が減免され、緑地育成奨励金が毎年土地所有者に支払われる。また、運営管理のために、周辺住民と土地所有者が「市民の森愛護会」を結成し活動する。
この市民の森制度が50年以上経過し、土地所有者(農家が多い)が遺産相続等の理由で離脱することがないのかが疑問であった。それに対応するのが市による買い受け制度である。財源として「横浜みどり税(横浜みどり税条例2008)」が主に使われる(場所によって緑地保全の別の財源も)。そして、情報開示により47ヶ所の市民の森で、市が買い受けた割合が公表された。全体556ヘクタールで311ヘクタール56%となっている。市民の森で最大の「新治市民の森(緑区新治町)」70.4ヘクタール中49ヘクタールが市有地となっていた。
市民の森で市有地が増えることは土地所有の「安定化」になるといえるが、土地所有者の中には、将来に亘って民有地のまま貢献する意思をもつ人もいる。そして、元々の市民の森の主旨が市民と行政の協働であるため、その色彩が薄れる恐れもある。山林の維持は、間伐や下草狩りなどの管理があって初めて成立する。それゆえ、市民のチカラを今後も必要とする。最後に、情報開示制度により当該データを整理していただいた、横浜市みどり環境局公園緑地事業課緑地保全担当の方々に感謝します。(文責:田口俊夫2025)
横浜市農業専用地区設定要綱の掲載
横浜市農業専用地区設定要綱(1971)によると、農家が寄り集まり10ヘクタール以上の集団的農地を「農業専用地区(以下「農専地区」という)」として区域指定し、その区域内で土地基盤整備、畑地かんがい施設整備、近代化施設整備、そして農道舗装整備に高い率の補助金を支給する。仮に農専地区に参加しない農地がある場合、その農地を除外して区域指定する。農地は前提条件として農業振興地域にあることを求めるが、農用地でなくてもよい。また、農地の筆ごとの管理をしていない。
農専地区に指定されたことで、何らかの制限が厳しくなることはない。優遇された農業環境整備費が支給されるだけで、農専地区を抜けても罰則はない。ただし、農用地であれば農地転用は難しく、農業振興地域白地(市街化調整区域内で農用地でない農地)であれば農地転用許可は可能だが周囲との調和が求められる。つまり、転用目的が農専地区内の周辺農地の営農を阻害する恐れがある場合には、農専地区協議会(農家の寄合)から、当該転用農家に申入れをすることがある。
農地転用が発生するのは農家相続時が多く、農家でない相続人が受け継いだ農地の処理に困り不動産屋に相談することから始まる。不動産屋は資材置場や介護福祉施設などを紹介することがある。また、農家同士で農地を融通することはありえるが、新規営農者へのハードルは高い。経験があるか、農業訓練校で学んだか、継続して営農できるか、など素人が気軽に参入できるようにはなっていない。
なお、資料の提供をいただいた横浜市みどり環境局農政推進課地域づくり担当の方々にお礼を申し上げます。(文責:田口俊夫2025)
神奈川大学人間科学部学生による社会調査との協働作業の成果発表
神奈川大学人間科学部学生とNPO田村明研究会のコラボレーション「横浜市の農地利用に関する現状と課題」Collaboration with the students of Kanagawa University and NPO Tamura on the research about the urban agriculture in Yokohama
2023年3月13日(月)午後4時より6時
神奈川大学みなとみらいキャンパス3015号教室
発表者:笹本明紀(4年生)、佐藤香波(3年生)、百々葵生(3年生)、楡井咲良(3年生)そして清水和明(神奈川大学人間科学部・特任助教)
参加者:25名(神奈川大学学生、都留文科大学学生、神奈川大学教員、横浜市農政部門職員、NPO会員)
久しぶりに、若者たちの熱気に満ちた公開研究会となった。神奈川大学で社会調査法を学ぶ学生たちが、横浜の都市農業に関心をもち調査研究を行った。その活動に対して、NPO田村明研究会の人的ネットワークを活用し、情報提供や研究への助言をしてくれる人材を紹介した。「なぜ都市化した横浜に、これほど農地が息づいているのか」という学生たちの素朴な疑問から始まった。文献資料を読み込み、関係者にヒアリングをし、現地を歩き回った。飛鳥田一雄市長と都市プランナー田村明が「都市農業」を構想してから60年が経っている。2015年に都市農業振興基本法ができて「農地は都市にあるべきもの」となったというが、あまりにも国の気付きは遅い。学生たちと清水先生の研究成果はまた別途、その詳細を掲載する。横浜の農地は、田村が1970年に果敢に設定した市街化調整区域で強く守られているが、それでも住宅建築や都市的土地利用で区域が蚕食されつつある。自治体施策の綻びも見られ、かつて田村が構想したように自治体の「総合的な施策展開」が求められる最後の段階に来ている、と感じる。(文責:田口俊夫)
For the first time in a long time, our open research meeting was filled with the enthusiasm of young people. Students studying social research methods at Kanagawa University were interested in urban agriculture in Yokohama and conducted research. The NPO Akira Tamura utilized its human resource network to introduce people who could provide information and advice on their research. The project began with a simple question from the students: 'Why is there so much agricultural land in urbanized Yokohama? They read literature, interviewed relevant people and walked around the city. It has been 60 years since Mayor Ichio Asukata and urban planner Akira Tamura conceived the idea of “urban agriculture,” and although the Basic Law for the Promotion of Urban Agriculture was passed in 2015 and “agricultural land should be in cities,” the state is too slow to realize this importance. The research findings of the students and Dr. Kazuaki Shimizu of Kanagawa University will be published soon in more detail on our website. Farmland in Yokohama is strongly protected by the Urbanization Control Zone, which Tamura boldly established in 1970, but even so the zone is being evaded by housing construction and urban land use. There are signs of an inconsistency in local government policies, and I feel that we are now at the final stage where the local government is required to “develop comprehensive policies,” as Tamura once envisaged. (Responsibility: Toshio Taguchi)
港北ニュータウン地域内の農業対策関係方針決裁書
農業振興地域の指定、港北ニュータウン地域内の農業対策、そして港北ニュータウン農業専用地区の指定について横浜市の方針決裁書です。情報開示請求によって開示されました。

都市農業講演記録・平山実氏『横浜都市農業の現状と未来』 2019年9月19日(木)午後6時 “Urban Agriculture of Yokohama, its now and future” by Minoru Hirayama

都市農業に関する横浜市行政文書 Public documents by the City of Yokohama regarding Urban Agriculture
飛鳥田市長と田村明による「横浜都市農業」政策の基本方針を決めた報告書です。横浜の都市農業は意図的に都市づくり戦略の中で、農地を位置づけ意図的に残したものです。他の都市のように、結果として農地が都市内に残ったケースとは異なります。
These are basic policy papers for initiating the Urban Agriculture Plan by the then mayor Asukata and chief planner Tamurasince 1968. As far as the case of Yokohama urban agriculture is concerned, farmland in Yokohama has been intentionally preserved according to the strategy of city planning concept by Tamura.
田村明による都市農業に関する講演記録 A talk addressed by Akira Tamura regarding how to initiate the urban agriculture policy of Yokohama
都市農業についての学術論文 Master thesis about urban agriculture of Kohoku New Town development by Fumie Harada
原田文恵さんによる東京大学大学院での修士論文『港北ニュータウン計画における農的土地利用に関する研究』を、ご本人の了解を得てリンクさせていただきます。是非ご覧ください。なお、原田さんは横浜市職員で、休職されて大学院で学ばれ、再び市役所に復帰されています。
東京大学学術機関リポジトリhttp://hdl.handle.net/2261/00076802